1年生の微生物学実習で腸内細菌の鑑別を行いました。
3種類の腸内細菌科の菌を同定しています。
確認培地へ増菌した菌を植菌します。
左からTSI半高層培地、SIM高層培地、シモンズクエン酸培地、VPブイヨンです。
培養後は菌の性状によって培地が変化します。
TSI(Triple Suger Iron)寒天培地は、腸内細菌の鑑別に常用される基本的な培地で、ブドウ糖、乳糖、白糖の3つの糖が含まれています。ブドウ糖、乳糖および白糖の分解性、ブドウ糖からのガス産生性、硫化水素産生性がわかります。
・斜面部 --- 黄変:乳糖および白糖の分解(A)
赤変:乳糖非分解
・高層部 --- 黄変:ブドウ糖の分解(A)
赤変:ブドウ糖非分解
黒変:硫化水素の産生(S)
・気泡または亀裂:ブドウ糖分解によるガスの産生(G)判定は斜面部/高層部(ガス)、硫化水素で表します。
写真一番左が培養前です。
その隣2本は斜面部も高層部も黄変しています。また、亀裂が入っていて培地も上に持ち上がっています。したがって、判定はA/AG。
一番右は、斜面部は赤変、高層部は黄変、黒変。そして、少し培地が浮いています。
したがって、判定は -/AGS。
ちなみにE.coli、Klebsiellaは乳糖分解菌、Salmonellaは乳糖非分解菌です。
SIM(Sulfide Indole Motility)培地は、硫化水素産生、IPA産生、運動性が判定できます。インドール試薬を添加してインドール産生も見ることができます。
・高層上部 --- 褐色になったらIPA反応が陽性
・高層部 --- 培地全体または穿刺部位にそって培地が黒変したら硫化水素産生あり
・運動性 --- 菌が半流動寒天培地中を遊走し高層培地全体が混濁すれば運
動性あり。穿刺部位のみに菌の増殖がみられたら運動性なし。
試薬を入れて、試薬層が赤色になったらインドール陽性。
一番左が培養前です。培地は淡黄色透明です。
その隣は、穿刺部位のみに菌の増殖がみられるので運動性なし。IPA反応陰性、インドール反応陰性です。
その隣は、培地全体が黒変、培地が混濁しているので硫化水素産生、運動性あり。IPA反応陰性、インドール反応陰性です。
一番右は培地が混濁しているので運動性あり。IPA反応陰性。インドール試薬を添加したら赤変したのでインドール反応陽性です。
硫化水素産生するのはSalmonella、インドール反応陽性はE.coli、運動性ありはE.coli、Salmonellaです。
シモンズクエン酸培地は細菌がクエン酸塩を唯一の炭素源として利用できるかどうかをみる合成培地です。
菌がクエン酸ナトリウムを炭素源として利用できれば菌が発育して培地をアルカリ化して緑色から深青色に変化します。
一番左が培養前です。
一番右は斜面部が深青色に変化しています。残りの3本も斜面部が少し深青色に変化しています。
培地にはブロムチモールブルーがpH指示薬として加えられていて培地がアルカリ化すると色が変化するのです。
陽性になるのはSalmonella、Klebsiellaです。
このほかに、Voges-Proskauerテスト、チトクロームオキシダーゼ反応を行って総合的に判断して菌を同定します。